PISパートナーズ コラム

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『性弱説のすすめ』―その2:メルマガ2号より

<前号、改善や取組がうまくいく組織とそうでない組織の違いの要因に組織風土があるということに続けて>

組織風土とは、組織を包み込む「心理的な環境」です。個々のメンバーの判断や行動に影響を与える暗黙のルールのようなものです。無自覚的であることが多いので、マネジャーの指示・命令だけでは変えにくい部分とされています。

したがって、いくらルールや計画を作っても、本気になってやろうとするのか、なし崩しになってしまうかは組織風土が大きく影響してきます。性弱説の考えからすると、いくら一部の個人が
強い意志をもっていても、易(やす)きに流れてしまいます。マネジャー1人が躍起になってもうまくいかないことが多いのです。

改善や取り組みがうまくいく組織かどうかを簡単に見分ける方法を紹介します。次の2つに注目します。この2つともダメな職場は、例外なく、改善や取組がいつも中途半端に終わったり、挫折したりする職場です。

(1)職場全体として提出物の締切をちゃんと守れているか
(2)職場の整理・整頓が行われているか

(1)は、あまり重要でないものの提出物を、(2)は必要なものがすぐ出てくるか、掲示物がきちんとメンテナンスされているか、も見ます。

これは、ある営業部長から教えてもらったことです。この二つが両方ともダメな営業所は業績がよくない、とのことでした。社内のことに手を抜いている集団は、外に向けた営業活動でも、微妙なところで手を抜いてしまい、それが結果の差として表れるのだそうです。
決めたルールや約束事をおろそかにしても、なんとなく許されてしまう組織風土が問題なのです。

組織風土を変えることは簡単なことではありませんが、変えるヒントはあります。組織風土は見えないものだからこそ、見えるものを変えることによって変えていくという発想です。

電動モーターメーカー、日本電産の永守重信社長は、赤字の会社や業績の悪くなった会社をM&Aし、クビ切りは一切せずに次々と蘇らせている経営者です。(興味のある方は、「日本電産 永守イズムの挑戦」 日経BP社を参照)

立て直しのために、彼がやるのは徹底した購買費をはじめとするコスト削減と組織風土の改革です。組織風土改革の方法として整理・整頓・清潔、清掃・しつけ・作法を徹底します(頭文字をとって6S)。とくに清掃活動は、永守社長や役員が率先してトイレ掃除を行うという徹底ぶりです。

リーダーが率先して行うトイレ掃除は、組織のトップが自ら率先して人の嫌がることを真剣にやる、小さなことを継続してやるというメッセージを「見える形」で伝えているのです。

清掃・整頓された工場では工具を探すなど、無駄な作業が減って効率化するだけではありません。清掃・整頓が習慣になると、小さな「異変」に気づきやすくなり、その異変を正常な状態に戻したいという意識が強くなります。少しでも無駄な仕掛品や不良品が発生すると、解決のために職場のみんなが、協力してスピーディーに行動するようになるのです。

結果的に残業も減り、生産性が向上していきます。生産性が向上していくと、「やればできるんだ」という自信が職場に全体に広がり、さらに難易度の高い取り組みにも挑戦していけるようになるそうです。

ここで起こっていることは、小さなことを徹底することで組織風土そのものが、いい方向に変化していることです。その組織風土の変化に影響され、一人ひとりの意識や行動が変わっていきます。

繰り返しになりますが、組織風土は暗黙のルールとして個人に大きな影響をあたえます。大きく影響を受けてしまうのは、一人ひとりは「弱さ」をもった生身の人間だからです。(これが前回からの「性弱説」)

であればこそ、その「弱さ」を逆手にとり、組織風土をプラスの方向に変えるによって一人ひとりの意識や行動をプラスに変えることができます。マネジャーから目の届きにくいメンバーにも、間接的に働きかけることが可能になるのです。

組織風土を意識して職場運営を行う―それが「性弱説」に立ったマネジメントの一つのあり方です。

(「『性弱説』のすすめ」終わり)