PISパートナーズ コラム

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「状況を共有する大切さ」 メルマガ9号より

Eメールは、非常に便利ですが、限界もあります。
特に何かを依頼したり、指示したりする場合には、気をつけなければなりません。

受け取る側の負荷を考えると、簡潔に書く必要があります。しかし、そのために状況や背景の情報が不足し、木で鼻をくくったような、そっけないものか、やたら丁寧だが、 意図や本音が見えてこないものになりがちです。 

そのようなメールを受け取った側は、心が動きません。その結果、メールの案件は後回しにされたり、必要最低限の対処で済まされたりするようになります。

仕事のできる人は、簡潔なメールのあとに、フォローの電話を入れ、相手の反応を確認しながら、背景や事情を補足して伝えます。

はじめは気が進まなかったけど、依頼する側の背景や事情が分かるにつれて「それなら協力しようか」と思った経験は、ありませんか?



経営学者のフォレットが唱えた管理の原則で、「状況の法則」というのがあります。これは「相手にとって受け入れがたい命令や要望でも、その根拠や背景、目的を伝えることで、相手が理解・納得して行動するようになる」というものです。

たとえば、「賃金カット」を伝えるときには、そうなった経営の現状や決めるまでの経緯を十分に説明する必要がある、ということです。「業績が厳しいので賃金カットします」 だけでは、従業員の納得は得られないし、反発を買うだけです。

ダメ管理職の典型として「トンネル・マネジャー」があります。これは上からの指示や「マネジャー会議」での決定事項をそのまま垂れ流すようにしか伝えない、まるで「トンネル」の役割しか果たしていない管理職を揶揄(やゆ)したものです。

上位者や上位組織からのメールを、部下に「○○からのメールを転送します」の一言で転送しまくる管理職も、この部類に入ります。

トンネル・マネジャーのもとでは、部下は、「なぜ、そうなったのか」、「どんな議論 を経て、そう決まったのか」納得できないので「やらされ感」が募っていきます。結果的に、職場での取り組みが中途半端になってしまいます。

以前の記事で会社や職場の「ビジョン」が明確な職場ほど業績、CS、ESが高い傾向にあることを報告しました(弊社実施、100以上の職場の調査より)。さらに、「なぜ、そのビジョンを目指しているか」、背景まで共有されている組織は、 ビジョンが明確な職場よりも高い業績、CS、ESのレベルにありました。

また、ビジョンが、はっきりしていても、その背景まで共有されている職場は、少数派 でした。これは、管理職が「背景」を語ることがあまり出来ていないことを意味しています。

景況が厳しいなかでは、痛みが伴う判断や決定が増えてきます。管理職は、部下にとって「つらい・厳しい要望」をせざるをえない状況が多くなります。そんな状況だからこそ管理職は、背景や事情を伝え、メンバーと「状況を共有する」ことがますます重要になってきます。

判断や決定のロジックや理屈は、筋が通っていて完璧なものが理想ですが、そんなこと ばかりではありません。

そんな場合は、判断のために自分が参照したり、思い浮かべたりした事実や現実をそのまま伝えるだけでも効果があります。同じ状況を共有すればするほど、同じような判断をする可能性が高まるからです。

相手に同じような経験してもらうのも効果があります。
ある自動車販売店の店長は、営業スタッフの、サービス・スタッフの事情を考慮しない身勝手な行動に頭を痛めてました。営業スタッフが、サービス工場のキャパを考えず、車検や点検の予約を入れたり、顧客の要求をたてに無理な要望を繰り返していたのです。店長が口をすっぱくしていくら注意しても、同じような状況が続きました。

そこで店長は、営業スタッフの朝礼を、サービス工場のフロアでやるようにしました。 サービス工場は、冷暖房はないので、夏は蒸し暑く、冬は、底冷えするような場所でした。朝礼が終わって営業フロアに帰ってくると店長は「サービス・スタッフは、あんな大変なところで仕事しているんだぞ。だからこそ、少しでも彼らが仕事がしやすいように考えてあげようよ」と言ったのでした。

2、3日もすると、営業スタッフの問題行動は、ピタッとなくなりました。さらに、営業とスタッフのコミュニケーションや連携が以前よりも良くなったとのことでした。「百聞は、一見に如(し)かず、百見は、一体験に如(し)かず」ということかもしれません。

相手や部下に働き掛ける前に状況をどれだけ共有できているか、振り返ってみませんか。