PISパートナーズ コラム

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業績目標を「めざす姿」に掲げる場合のヒント メルマガ7号より

 市場環境が激変し、なかなか「めざす姿」を描きにくい、描いても現実離れしがちです。とくに業績目標をビジョンに掲げている場合は、目算が狂ってきます。しかし、業績が厳しい時代だからこそ、業績目標を避けて通ることはできません。

 会社経営をはじめて気がついたことがあります。
サラリーマン時代は、部署で「2年後、売上○○○億円を達成する」、「業界No.1をめざす」という目標を掲げてもピンときませんでした。正直、経営陣向けのリップサービスぐらいにしか、感じられませんでした。この数字を達成した時に、「自分はどう変わっているんだろうか」、「今より成長し、面白い仕事をしているんだろうか」が、見えなかったのです。

 ところが、会社経営をやり始めると、目標数字が、がぜんイメージを伴うのです。売上がこれくらいになれば、オフィスはこの辺に引っ越して、人を増やしてこんなサービスを始めて・・・。つまり、数字を掲げるだけで、ビジネスの広がりや自分の働き方の変化がイメージできるのです。

 経営幹部や事業部長クラスにとっては、業績の目標数字が「めざす姿」として十分意味を持ってくるのです。「2011年 売上○○億円、△△の分野でシェアNo1」などの数字は、事業家としての挑戦意欲とイマジネーションをかき立てます。



 しかし、多くの従業員にとっては、めざす姿に売上目標を掲げても、ピンときません。せいぜい「会社が成長するんだな。それなりに給料も増えるかもしれない」 といったところが本音です。組織が大きくなればなるほど、この傾向は強くなります。



 会社の「めざす姿」を、自分の組織にどう浸透させるか、を管理職向けの研修でテーマにしたことがありました。その時の受講者の言葉が頭に残っています。

「会社は、3年後、売上○○億円、経常利益△△億円とビジョンを掲げているが、それを達成したときに、どのように個人にはねかえるか、部下からと聞かれると困るだよね」と本音を漏らしていました。中間にいる管理職にとっては頭の痛い問題です。



 頭の痛い問題ですが、避けて通れない重要な問題です。というのは「めざす姿」が浸透しているかどうかは、業績、ES(働きがい)、CS(お客様満足)の3つに同時に大きな影響を与えているからです。これまで100以上の職場を調査研究してきましたが、その結果、次のようなことが分かりました。



 「職場の将来の『めざす姿』が明確になっている」、「職場の『めざす姿』の背景が共有されている」という2つの質問項目で高い得点の組織ほど、他の組織に比べ、業績、ES、CSの水準が高い傾向にあったのです。



 組織の方向性が見えることで、お客様に何を提供すべきか、自分はどんな働き方をしていくか、よりイメージしやすくなるのではないか、と考えられます。

 先ほどの、頭の痛い問題に戻って、経営が業績数字のビジョンしか出してこないときには、職場を預かる管理職は、どうしたらいいのでしょうか。



 唯一の解決策ではありませんが、ヒントはあります。「めざす姿」を語るときに、その数字の裏にある背景や意味、それに伴って起こることをメンバーに語ったり、問いかけたりしてみてはいかがでしょうか。

 「売上○○億円を達成したときには、お客様からどんな評価をもらっているのだろうか?」、「この数字は、お客様から圧倒的な支持を得られないと、達成できないよね。じゃあ、圧倒的な支持、たとえば『アンタの会社じゃなきゃ、いやだ』と言ってもらうためには、どんなお客様対応が必要なんだろうか?」

 管理職は、必ずしもすべてのことに答えをもつ必要はありません。重要なのは対話によってメンバーを巻き込むことです。その対話のプロセスで、メンバー自身が、「こんなふうに働いていきたい」、「こんな仕事ができるように成長したい」と『自分事』に結びつけられた時、組織に大きなパワーが生まれます。
 
 先が見えにくい時代だからこそ、数字が意味する背景や働き方の変化を対話によってイメージしてみませんか。